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 土手を歩いていると、向こうから中年の男女が歩いてきた。すれ違う瞬間、唐突に携帯電話を手渡され、自分たちの写真を撮るように頼まれた。操作が分からなかったが、適当に真ん中のボタンを押し、すぐに携帯を返すと、女の方は、うしろに彼岸花が写っていて縁起悪いぃ〜と言って男に画面を見せた。男は、女の顔が丸い、丸く写っている。とにかく自分の女の顔が丸いことを盛んに嘆いている。呆然とするわたしに一瞥もせず、ふたりは礼もいわず去っていった



 田舎の単線。いつもと違う車窓を楽しんでいると、葬式に向うらしい喪服着た団体が隣の車両からぞろぞろと押し寄せてきた。長老のような男が、そろそろ火葬場が見えるはずだとおもむろに声を発すると、次から次へ、え!どこどこ!西日がまぶしくてよく見えないわ!もう通り過ぎたんじゃないの!まだ先だろうなどなど親戚一同がハイテンションで盛り上がりはじめた。喪服を着た集団のはしゃぎっぷりこそ人間の真の姿だなあという感慨に耽りひとりほくそ笑んだ

by slyr | 2015-07-22 13:26

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